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繊維・紙パルプ業界への就職

 

[業界研究] 繊維・紙パルプ


概要

洋服や自動車内装などに使われる繊維素材を開発し、メーカーにふさわしい素材を提案・販売するのが繊維業界の主な仕事。
紙パルプ業界では、一般用・産業用に向けてさまざまな商品を製造・販売している。
繊維・紙パルプ業界
衣料品メーカーや産業メーカーに素材を提供する

繊維といっても、その種類はさまざま。

衣料品に使われる糸や綿、人工皮革などの素材を研究開発し、アパレルメーカーに提供するというイメージが一般的だが、化学繊維や天然素材の研究が進み、住宅用の断熱材からスポーツ器具、航空機の内装や自動車のエアバッグにも繊維は使われている。

また、紙・パルプ業界は、雑誌や書籍に使われる印刷用の紙から段ボール、トイレットペーパーなどに使われる素材を研究開発し、印刷会社や衛生用品、段ボールメーカーなどに提供している。
炭素繊維や高機能性素材などの活用で新市場創設に躍進する日本の繊維メーカー
2016年3月に公表された経済産業省の工業統計調査(産業別)によれば、製糸業や化学繊維製造業、紡績業などの繊維工業全体の2014年の製造品出荷額は、3兆8,223億円となっている。

2008年に4兆2,000億円を記録したが、リーマンショックの影響で低迷、2010年後半より上向き2011年は3兆9,556億円まで盛り返したが、海外からの安価な製品の流入もあり実質的には横ばい状態が続いている。

国内市場は、少子高齢化や人口減少といった事情もあり縮小傾向にあるが、世界的には人口増加もあり化学繊維を中心に市場は拡大傾向にある。ただし、中国を中心とした東南アジアでの化学繊維の生産量が拡大しており、価格面での厳しい競争を強いられている。

そのため、高い技術力を持つ国内メーカーは、汎用繊維でなく、炭素繊維や特殊な機能を持つ高機能素材といった分野へ進出しており、ファッションを中心とした衣料用に限定することなく、産業用での市場開拓や異業種とのマッチングによる新市場創設にも力を入れている。

同時に、光学フィルムや特殊樹脂など非繊維事業へのシフトも進めており、いままでとは異なる素材メーカーとしての期待も高まっている。
環境に優しい素材開発が進んでいる
これまでは石油を原料とする化学繊維と綿を原料とする天然繊維が組み合わさった衣料品が多く、リサイクルをするにも工程が複雑だった。

しかし、最近は植物由来の原料や生分解性プラスチックを使った新素材が登場し、100%土に戻して循環できるほか、石油由来のポリエステルでも廃棄後に地中の微生物が分解できるため産業廃棄物にならない素材も開発された。

日本は国土面積が狭いという特徴に加え、古紙回収システムが整備されており、高い回収率を支える結果となっている。
わが国の利用率・回収率は世界でもトップクラスにあり、まさにリサイクル先進国と言える。
電子媒体へのシフトとペーパーレス化の影響が大きくマイナス傾向が続く
日本製紙連合会が2017年1月に発表した「2017(平成29)年紙・板紙内需試算報告」によれば、2016年の紙・板紙の内需計(見込み)は2,672万トンと前年比0.5%のマイナスとなった。
リーマンショック後の2009年に大きく数量を落とした紙(印刷・情報用紙や包装用紙、衛生用紙など)・板紙(段ボール原紙や紙器用板紙など)の内需は、板紙については2010年に4年ぶりに前年比プラスとなったものの、その後は低迷を続けマイナス傾向にある。

2017年については、徐々に景気が回復していること、インバウンド効果による消費需要(特に衛生用紙)、ホテルや商業施設の増加による関連需要、ネット通販の拡大、食品・医薬・健康関連市場の堅調といったプラス要因がある一方で、人口減や少子高齢化、企業や自治体によるペーパーレス化、スマートフォンの活用による電子媒体へのシフト、包装の簡略化といったマイナス面を想定している。

そのため、段ボール原紙と衛生用紙は前年を上回ることを想定しているが、電子媒体へのシフトやペーパーレス化の影響は大きく、2017年の紙・板紙の内需計については前年より1.0%マイナスの2,646万トンと予測。7年連続のマイナス成長になりそうだ。各社は引き続き余剰設備の廃棄や合理化、海外事業の強化などにも力を入れている。


豆知識

人工合成に成功したクモの糸の繊維
たんぱく質でできているにも関わらず、同じ太さであれば、鋼鉄の数倍の強度とゴムのような高い伸縮性を持つクモの糸は、世界で最もタフな繊維として知られている。
クモの糸を鉛筆ほどの太さに束ねれば、飛行中のジェット機も止められると主張する研究者もいるほどだ。

これまでも、多くの企業がクモの糸の再生に取り組んできたが、山形県ベンチャー企業「スパイバー」が、人工合成したクモの糸繊維「QMONOS(クモノス)」の量産技術を確立したと発表し、大きな話題となった。

「鋼鉄より強く、ナイロンよりしなやか」といわれるクモの糸の繊維の量産化が進めば、乗用車や飛行機など幅広い分野での産業利用が期待されている。
また、たんぱく質に着色すればさまざまな色の繊維を作ることも可能なため、衣料分野での期待も大きい。

2015年9月には開発を進めてきたクモフィブロインベースのタンパク質素材「QMONOS」を用い、THE NORTH FACEの 「ANTARCTICA PARKA」 をベースにしたアウタージャケットのプロトタイピングに成功した。
「MOON PARKA」 と名付けられたプロトタイプは、G7伊勢志摩サミットや豊田市美術館でも展示され、国内外でも注目を集めている。不可能といわれてきたクモの糸の実用化という夢はまさに目の前まで来ている。


業界関連用語

炭素繊維
釣竿やゴルフクラブのシャフトなどから利用が始まり、今では自動車や航空機、宇宙機器などにも採用されている炭素繊維

原料には、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)が利用されている。

重さは鉄の4分の1、強さは10倍もあり、非常に軽量ながら強い強度を示す。そのため、「鉄よりも強く、アルミニウムよりも軽い」といわれている。

世界市場において、日本企業が占めるシェアが大きな商品の1つで、電気伝導性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性などにも優れているため、さらなる分野での用途の開発も期待される。


バイオプラスチック生分解性プラスチック
生物資源から作られたプラスチックで、おもにトウモロコシやじゃがいもなどのでんぷんを原料とする。

バイオプラスチックの多くは、生分解性プラスチックとしての性能を持ち、微生物によって最終的に水と二酸化炭素に分解される。

そのため、産業廃棄物にならずに、自然環境への負荷が少ない。


●PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維
バネのような分子構造を持ち、適度な伸縮性や回復性が特長の繊維。

ポリエステルを上回る形態回復性、ナイロンに迫る柔らかさとストレッチ性の両方を兼ね備えている。

肌触りがソフト、耐久性が高い、シワになりにくい、などの特長が多く、ファッション衣料やスポーツ衣料など幅広い分野に採用されている。


どんな仕事があるの?

●営業
洋服や自動車内装などに使われる繊維素材を、顧客であるメーカーや卸会社に提案・販売する。

●資材調達/購買
各工場やプラントからのニーズをとりまとめて、国内外から原料や薬品を仕入れる。

●商品開発
既存商品を改善するほか、新商品の企画を立てて、試作や開発を行う。

●基礎研究
次世代向け製品に役立てるため、最先端技術の研究を行う。

●生産管理
スケジュールや計画を立てて、スムーズに生産できるよう手配をする。

●プラント/設備設計
製品をつくるための工場やプラントを、スタッフがスムーズに効率よく働けるように設計する。