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プラント・エンジニアリング業界の就職

 

[業界研究] プラント・エンジニアリング

概要

プラントは、石油やガスなどのエネルギー、化学、医薬、金属など、社会や経済を支える重要な物資の生産設備。

プラント・エンジニアリング業界では、こうした設備を、企画・設計の段階から、製造・設置・運転までまとめて請け負っている。

巨大なプラントになれば、一国の経済を発展・加速させ、社会生活に大きな影響を与えることもある。
プラント・エンジニアリング業界
経済回復とともにさらなる成長が期待されるプラントエンジニアリングメーカー

国内外の企業から石油精製、化学、製鉄、発電などのプラントを対象として、企画、設計、調達、施工、管理を一括して請負うプラントエンジニアリング産業は、わが国の製造業の競争力を強化し、産業インフラ、生活インフラの整備に貢献しているだけでなく、海外におけるプラントの建設を通じて、世界のエネルギーの安定供給や産業の高度化などにも寄与している。

現在は中国など新需要国の台頭により多数のプラント需要が出てきており、日本は省エネ効果や収率の高い日本のプラント設計技術を背景にこれら大型プロジェクトを受注している。

また1970年代の高度成長期に建てられたプラントのメンテナンス、CO2削減を目的としたエネルギー設備改良等の需要も高まっている。
海外受注の落ち込みでマイナスとなるも1年でV字回復。中期的な見込みは明るい
高い競争力を持ち、世界でも優位性を認められる日本の環境技術は注目されており、各種環境関連プラントは産油・産ガス国やアジアなどで旺盛な受注活動を展開している。

一般財団法人エンジニアリング協会は、例年エンジニアリング業界の動向を調査・分析しており、その最新結果を平成28年度「エンジニアリング産業の実態と動向」(2016年9月刊)として取りまとめている。

エンジニアリング専業、総合建設、造船重機・鉄鋼・産業機械、電機・通信・計装の4業種にわたるエンジニアリング協会会員56社の回答をもとに数値を算出しており、2015年度の業務受注高は16兆7,006億円となった。

前年度との比較では8.0%の減少となる(年度によって回答社数が異なるので前年度比は同一企業ベースによるもの。以下も同様)。前年度比ではマイナスだが、前年度は現在の統計基準を採用した2011年度以来最高の受注額を記録しており、2015年度についてはマイナスとはいえ、過去2番目に多い受注額であった。

業種別では、エンジニアリング専業が前年度比30.8%減と大きく落ち込んだ一方で、総合建設は同2.7%減、造船重機・鉄鋼・産業機械は同0.1%増、電機・通信・計装は同7.7%減となんとか踏みとどまった。

プラント・施設別では、都市開発・地域開発、電力プラント、交通インフラの3分野が好調で全受注高の6割強を占めたが、石油・ガスエネルギーと化学の2分野については、海外受注が不振で全体の受注にも影響した。
中でも石油・ガスエネルギーについては、前年度にCIS地域(旧ソ連邦を構成していた国家によって構成される国家連合体)での大型案件に匹敵する案件がなかったことが影響している。

国内受注は前年度比3.7%減だが、海外は同23.8%減。しかし、海外からの受注の落ち込みは一時的なものと判断しており、2016年度については、国内こそ1.4%減を見見込むが海外は37.4%増と急回復を見込んでいる。
2017~2019年度の中期見込みについても受注環境は良好で、2015年度を100とした場合、2017~2019年度は108.5としている。

老朽化した国内インフラの整備や、海外へのインフラ輸出、エネルギーや水処理設備などの需要は高まりつつある。
さらには、エネルギーの貯蔵やリニアモーターを使った物流システムの構築のほか、多用途での利用が期待できる大深度地下空間の開発や、海洋開発など、将来にわたってプラント・エンジニアリング会社が活躍できるフィールドは広い。
エネルギー市場とリサイクル市場の融合が進む
東日本大震災とそれに続く電力危機により、再生可能エネルギーの安全性への関心が高まり、バイオマス市場は再び新たな成長期に入った。

これを受けてリサイクル市場もレアメタル類を中心に拡大を続けており、非金属系やバイオマスが積極的に循環利用へとシフトされるようになっている。
エネルギー市場とリサイクル市場は重なるようになってきたと言えるだろう。

たとえば石油会社が風力発電会社を買収したりバイオマス燃料開発事業に乗り出したりなど、従来はそのどちらかの分野のみを扱っていた企業が双方を取り扱い始めるケースが増加している。


豆知識

動脈産業と静脈産業
採取したり輸入したりした資源を加工して、新たな製品を製造し流通・販売する産業のことを、酸素や栄養を運ぶ動脈の働きに例えて“動脈産業”、一方で不要になり回収した製品をリサイクルする産業を、老廃物や二酸化炭素を回収する静脈の働きに例えて“静脈産業”と呼んでいる。

これまで“静脈産業”は、廃棄物処理の延長線上に捉えられることが多かったが、いまでは新たな成長分野の産業として捉えられ、政府もその活動をバックアップしている。

リサイクルビジネスは、今後も拡大が見込まれており、アジアを中心に海外展開を進める企業もある。

高い技術力を持った日本の“静脈産業”が日本経済を牽引する力となることが期待されている。


業界関連用語

●洋上LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)プラント
従来の海洋ガス田では洋上で取り出したガスを陸上にあるLNG液化プラントまで送る海底パイプラインが必要であるため、ガス田までの距離や水深によっては敷設が困難だったり、ガス田の規模が小さい場合には採算が成り立たないケースもあった。
そのため、世界の海洋には中小規模を含めた未開発のガス田が多数存在しているが、それらの開発手段として有望視されているコンセプトの1つが、液化プラントを洋上に設置するLNG FPSO (Floating Production, Storage and Offloading System)。
ここでは、洋上で取り出したガスをその場で液化し、LNGを生産、積み出すことが可能になる。


●リサイクル法
資源・廃棄物の回収や再利用など、リサイクルに関するルールは、リサイクル法によって定められている。
リサイクル法では、 2001年4月1日に施行された「特定家庭用機器再商品化法(いわゆる家電リサイクル法)」がよく知られているが、実は対象の種類ごとにいくつかに分類されている。
主な法律には、商品の容器やビン・缶・包装紙などについては「包装容器リサイクル法」、食品に関しては「食品リサイクル法」、デジタルカメラやゲーム機器など小型の電子機器については「小型家電リサイクル法」などがある。


●水ビジネス
世界的な人口増加に伴って水資源の需要は増え続けている。また、下水道の不備や水質汚染も深刻化しており、水の需給バランスが悪化している。
そのため、各国で水インフラの整備を進めており、上下水道に関わる水処理ビジネスの市場が世界中から注目を浴びている。
経済産業省では、2015年の世界の水ビジネスの市場規模を、施設設備が29兆8,441億円、事業運営が53兆7,753億円の合計83兆6,195億円と試算、2020年には100兆円を突破すると見込んでいる。非常に巨大な市場があるにもかかわらず、海外市場における国内企業のシェアはわずか.0.4%でしかない(経済産業省の試算による2013年度の数値)。
一部の自治体では、企業と連携して海外展開に取り組む動きもあり、大きな拡大が期待される市場に注目が向いている。


どんな仕事があるの?

●営業
プラント建設案件を見つけてくるほか、顧客企業との折衝や契約などを行う。

●資材調達/購買
プラント建設に必要な機器や素材を、世界中から調達する。

●プロジェクトマネジメント
建設プロジェクトのスケジュールやコスト、人材、品質などを管理する。

●設計
機器や配管など、各専門設備の詳細設計をする仕事と、プラント全体の設計を担当する仕事に分かれている。