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建設・設備関連

 

[業界研究] 建設・設備関連


概要


建設業界は、住宅をはじめ、超高層マンションやビル、さらには空港やダムなど、あらゆる建物の建設や土木工事を担っている。

設備工事業界は、電気工事や空調工事、上下水道の給排水工事など、建築物に付随する設備全般の工事を担っている。

建設・設備関連業界
身近なものから国家レベルまで、広範囲に及ぶ建造物と顧客
小さいものは物置から、大きいものはダムまで、生産の対象となる「建造物」は千差万別。
世の中にある物すべてが対象であり、何でも「つくる」のが建設業である。

また、幅広い建造物に伴い、顧客もさまざま。個人から企業、国、地方団体など、発注者があらゆる分野に及んでいるのも特色の1つといえる。
典型的な「受注産業」である建設業界
数多くある受注産業の中で、顧客の注文を受けてから生産をスタートする「受注生産方式」の特徴が1番強く表れているのが建設業界だ。

建物により、規模や用途、工事方法などが異なるため、1つひとつ生産計画を立てる必要があることによる。

また、建設会社はそれぞれ、道路舗装やトンネル、高層ビル、空調工事などの得意分野を持っており、建設業のうち約9割は中小工務店となる。

土木と建築の両方の工事を手がけ、工事の計画から施工管理までを行うのが総合建設業、いわゆるゼネコン(General Contractor)である。
企業の設備投資や大型公共工事の復活で前年比3.1%増
一般社団法人日本建設業連合会が取りまとめた受注実績調査(会員97社を対象)によると、建築・土木をあわせた受注総額は、2016年は総計15兆3,556億円で、2015年の14兆8,985億円を4,571億円上回った(3.1%増)。景気の回復を受け、企業の設備投資や大型の公共工事もあり15兆円を突破した。

発注者別に見ると、前年に大きく減少した反動もあってか、国の機関が前年比9.5%増の3兆239億円、官公庁が同7.9%増の4兆6,763億円、地方の機関が同5.2%増の1兆6,524億円と、公共工事の発注額が軒並み増加している。民間部門についても、前年比3.0%増の10兆3,452億円と伸びているが、製造業は前年に24.9%と大幅に増加した反動もあって2016年は1兆5,677億円と同13.6%減、非製造業は同6.6%増(前年は18.3%増)の8兆7,775億円と明暗を分けた。

2017年は東京オリンピックパラリンピック関連の施設整備が本格的にスタートすることもあり、建設業界にとっては好況といえそうだが、「建設業の2017年問題」(豆知識を参照)や、好景気による人材不足、原材料費の上昇といった課題もある。


豆知識


今なお愛される八田與一(ハッタヨイチ)と烏山頭ダム
ビルや建物などの建築物では、設計者の名前が語られることも多いが、トンネルや橋などの土木構造物では、有名な青函トンネル明石海峡大橋のようなビッグプロジェクトでさえ技術者や設計者の名前が語られることはない。

そんな中、1930年に完成した台湾の烏山頭ダムは、当時工事を担当した八田與一の名をとって八田ダムともいわれている。

ダムの建設だけでなく、灌漑事業にも従事し、深く地元に関わったこともあり、命日には例年墓前祭が執り行われているほど知られている。

第二次大戦以前の工事では、1人のプロジェクトリーダーが、構想・設計・工事まで関わることが多かったが、今では工事の細分化もあり多くの人が関わるため、こうしたケースは少なくなっている。
業界に激震! 建設業の2017年問題
常時、従業員を雇用する法人はもちろん、個人事業者であっても常時5人以上の従業員を雇用している事業所(サービス業を除く)は、健康保険や厚生年金といった社会保険への加入が義務付けられている。

しかし、社会保険への加入にはコストが掛かるため未加入のケースもあり、特に建設業界では未加入の事業者が多いとされてきた。
国土交通省の発表によれば、2016年10月調査で、建設企業・建設労働者の3保険(雇用保険・健康保険・厚生年金)すべてに加入している割合は、企業別で96%、労働者別では76%となっている。
加入割合は全体的に改善傾向にあるが、国土交通省は建設業界に対して、「平成29年度までの社会保険全員加入」を強く推奨しており、これが「建設業の2017年問題」と言われている。

国土交通省ガイドラインによれば、「遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」としており、社会保険に加入していなければ今後の事業継続に大きな影響が出ることが予想される。

一方で、社会保険料の企業負担は小さくない。特に、中小の事業者にとっては、経営に与える影響も無視できない。


業界関連用語


●復興需要
震災などで失われた道路や橋、建物などを作り直したり、衣類や家電などを買い直したりすることで生まれる需要のこと。
日本経済を押し上げる原動力となることも期待されている。

一方で、人件費や原材料費の高騰もあって、入札案件において、入札が不調となるケースも多い。

2020年の東京オリンピック関連施設の整備もあって労働者が不足気味なこともあり、緊急措置として外国人労働者の活用が検討されている。


●オリンピック特需
経済産業省のサイトにある「経済解析室ひと言解説集 建設業とオリンピック」では、建設業就業者の動向とオリンピック開催の関係に触れている。

日本では、1964年(東京)、1972年(札幌)、1998年(長野)と過去3回オリンピックが開催された。就業者総数における建設業就業者数の割合は、東京時では開催の2年前、札幌時では開催前年、長野時でも開催前年に大きく増加している。経済成長期ということもあり、東京と札幌については開催後も割合は増加したが、長野の開催後は徐々にこの割合は減少している。

なお、2012年のイギリスでは開催地が決定した2年後がピークとなり、その後は徐々に減少している。成長率が高い時期は、建設業も景気がよくオリンピックの影響は見えにくいが、低成長期ではオリンピックのような大イベントは大きな雇用効果を発揮することがわかる。


●インフラの老朽化
2012年12月山梨県にて起こった笹子トンネル天井板落下事故が起こり、死傷者が出た。

国民生活の基盤である道路や橋、学校や水道、公営住宅などインフラは、日本が豊かになっていった高度経済成長期である1960年代頃から増設されたため、近年老朽化が指摘されており、予防保全や建て直しが必要となっている。


●VE方式
VEとはValue Engineeringの略で、入札・契約の際に、発注者が施工業者からコストダウンが可能な技術的な提案を受け入れる入札方式。

建設業界では技術開発の進展が早く、施工方法などで固有な技術や工法を有する企業も多い。

VE方式であれば、入札時や契約後にコスト削減が可能な技術提案を受けることが期待できる。

発注者側にとっては建築物の機能を低下させることなくコストを削減することができ、施工業者側にとっては独自のノウハウを活かして工期の短縮が図れたり、契約後の提案による設計変更であれば一定のインセンティブがある、などのメリットがある。


スーパーゼネコン
大手から中小まで数多くの企業が存在し、ピラミッド型の構造が確立されている建設業界。

中でも、国内外で大規模建造物の工事を請負う、鹿島建設大成建設清水建設大林組竹中工務店の大手5社は、売上高・歴史・会社規模などが大きいことから「スーパーゼネコン(Super General Contractor)」と呼ばれ、ピラミッドの頂点にある。


どんな仕事があるの?


建築士
建築物の設計、工事監理を行うほか、業務の適正化をはかり建築物の質を向上させる。建築士には一級、二級、木造建築士があり、建築物は構造と規模ごとにランク付けされ、それぞれの設計範囲が定められている。

技術士
技術士法にもとづく国家資格で、科学技術の専門業務を行うことができる。「技術上の問題を発見し、それを解決する業務」すなわち技術コンサルタントとしての業務を求められることが多い。技術士全体の8割強が一般企業やコンサルティング会社に勤務し、残りは官公庁に勤務しているほか、技術士事務所を開業して独立技術コンサルタントとして活躍していると言われる。

施工管理技士
工事管理者向けの国家資格で、公共工事における監理技術者になることができる。公共工事の入札参加資格に必要なため、人気の高い資格でもある。

●工事監理と施工管理
設計を担当した建築士が設計図通りに工事が行われているかを施工現場で確認することを工事監理、工事施工の指揮監督を行うことを施工管理という。

技能士
国家検定による資格で、とび、鉄筋施工、建築大工、左官、れんが積み、防水施工、内装仕上げ施工、配管などがある。

●CADオペレーター
CADと呼ばれる図面作成支援ソフトを使って、コンピュータ上で図面を作成する人、または職種のこと。在宅での勤務が可能であるケースや、持っているスキルによっては比較的高収入を得ることが可能なこともあり、近年女性を中心に人気を集めている。