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精密・医療機器

 

[業界研究] 精密・医療機器

概要

精密機器業界は、デジタルカメラ複写機などの精密機器をつくり、国内外に販売する。医療機器メーカーは、内視鏡などの診療機器や手術などに使われる治療機器などを作り、国内外の医療機関に販売する。
精密機器業界
スマホカメラとの競合で出荷は厳しいが、レンズ交換式はそろそろ底打ちの期待も!

一般社団法人カメラ映像機器工業会の発表によると、2016年のデジタルカメラの生産実績は、前年の68.3%となる2419万台、金額では前年の80.2%となる7,103億円と、前年に比べて大きく減少した。

国別では日本向けが前年の71.9%の352万台、アジア向けが同74.2%の638万台と落ち込み、欧州向けは同64.2%の773万台、米州向けも66.9%の600万台と、さらに落ち込みが厳しかった。

タイプ別では、レンズ一体型は前年の56.3%の1,258万台と非常に厳しい結果になったが、レンズ交換式は同88.9%の1,161万台で踏みとどまった。なかでもノンフレックス(一眼レフ以外のミラーレスやコンパクトシステムカメラなど)は同94.4%の316万台と前年並みの数字に落ち着いた。

デジタルカメラは引き続きスマートフォンと競合関係にある。スマートフォンのカメラ機能やレンズ性能が向上していることもあり、特にレンズ一体型のデジタルカメラの販売は前述のように非常に厳しくなっている。
一方でノンレフレックスタイプは前年並みの実績を記録しており、レンズ交換式のデジタルカメラ市場は、そろそろ底打ちするのではとの期待もある。
2016年の事務機器業界の状況
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会は、会員企業の2016年の出荷実績を発表している。このリリースによると、2016年の出荷額は前年の91.7%となる1兆4,657億円。

国内市場においては、前年の98.9%となる3,619億円の微減、海外向けは同89.6%の1兆1,038億円となった。海外市場は近年拡大傾向にあったが、世界市場を牽引してきた中国の景気拡大のペースが減速していることもあり、一転マイナスとなった。

また、機器別の出荷実績(金額ベース)では、複写機/複合機が前年同期比94.1%の9,138億円、ページプリンタが同83.9%の2,057億円、データプロジェクタが同89.6%の2,159億円、パーソナル情報機器(電卓/電子辞書)が同94.4%の584億円、流通情報システム機器(ECR/POS)が同89.6%の492億円、デジタル印刷機が同93.3%の120億円、シュレッダが同98.4%の87億円、タイムレコーダーが同93.6%の19億円とすべてが前年比でマイナスとなっている。

今後については、2020年の東京オリンピックパラリンピックの開催を控えて都心でのオフィスビル新築や建替えにともなう事務機器需要が期待できるとともに、海外市場においては、アメリカでは緩やかな景気拡大の基調が持続しそうだ。
一方で、中国市場に対する不透明感や景気回復途上にあるヨーロッパの状況など気がかりな点もある。
医療機器に参入する精密機器メーカーが増えている
カメラメーカーなどの画像処理技術を活用して、精密機器メーカーが医療機器に参入するケースが増えている。
少子高齢化が進む日本では、政府が医療費抑制政策を掲げていることから、「早期治療」や「早期診断」が医療業界のキーワード。

病気の早期発見のためには、この画像技術が欠かせないことから、精密機器各社は医療業界にビジネスチャンスがあると判断。
消費者向け製品に比べて、価格下落が激しくないことから、医療機器開発に力を入れているようだ。

豆知識

日本の珍発明!? と揶揄されていた「自撮り棒」
スマートフォンの普及によって、誰もがいつでもどこでも簡単に写真撮影できるようになったことで撮影の仕方も変化。

そんな中で登場し大ヒットとなったのが、カメラやスマートフォンに取付けて、自分撮りを行うための棒状の器具、いわゆる「自撮り棒」。
海外からの旅行客が日本に持ち込んだ代物と思いがちだが、実はれっきとした日本生まれの製品。

ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)が、「エクステンダー」という商品名で世界最初の「自撮り棒」を発売したのが1983年のこと。
当時のカメラは今のものほど軽量でコンパクトではなかったため、使いにくくあまり普及することはなかった。

そうした残念な理由もあってか、1995年には「日本の珍発明」としてアメリカで紹介されている。

しかし、スマートフォンの普及にともない「自撮り棒」が見直されることになり、2013年ごろから普及。
2014年にタイム誌がヒット商品の1つとして紹介するとさらに広がりを見せた。

その後、世界的な人気となった「自撮り棒」だが、撮影に夢中になって世界遺産を破損したり他人に怪我をさせてしまうという事件が多発し、今では多くの美術館やイベント会場では使用禁止となっている。

業界関連用語

●IC(アイシー)/LSI(エルエスアイ)
ICとはIntegrated Circuitの略で、日本語では集積回路といわれている。

増幅や演算などの特定の機能を果たすために、多数の素子(主に半導体)で構成された電子回路を小型のパッケージにまとめた電子部品のことである。

なお、ICは集積度(素子数)によってSSI(Small Scale Integration)やGSI(Giga Scale Integration )といった複数の分類があるが、小規模のものをIC、大規模のものをLSI(Large Scale Integration)やVLSI(Very Large Scale Integration)と呼ぶことが多い。


ウェアラブルカメラ
ウェアラブルカメラとは身体などに取付けてハンズフリーで撮影する小型カメラ(ビデオカメラ)のこと。
スポーツ用途で使うことが多いため、スポーツカムやアクションカメラなどとも言われている。

通常のビデオカメラと異なり小型で軽量なため、頭部(ヘルメット)などに取付ければ、簡単に自分目線での撮影ができる。

また、自転車やバイクのハンドル、サーフボードなどに取付けて映像を記録する際にも使われる。

従来とは違う迫力映像が撮影できるとあって人気になっている。さらに、動物などの生物に取付けられるものもある。


3Dプリンター
3Dプリンターとは、平面の紙に印刷する一般的なプリンターと異なり、コンピューターで作成した3次元の設計データを元に、樹脂などを使って立体造形物を作ることができる機器。

金型を使わなくても、複雑な構造の立体物を作り出せることから、製造業を中心に幅広い分野で導入が進んでいる。

経済産業省の試算では、3Dプリンターの市場規模は2020年に1兆円、交換部品など関連市場が10.7兆円になると見込んでいる。

小型化、低価格化も進んでおり、個人用3Dプリンターの販売も始まっている。

どんな仕事があるの?

●営業
自社商品を、顧客である企業や卸会社に提案・販売する。顧客の要望を聞き出し、商品の改善や新商品企画に役立てる。

●ハードウェア設計
機器全体の仕組みを設計する。

●ソフトウェア設計
機器がうまく動くように、ソフトウェアを設計する。

●システム設計
機器がうまく動くように、ソフトウェアを含むシステムを設計・開発する。

●生産管理
スケジュールや計画を立てて、スムーズに生産できるよう手配をする。
医療機器業界
医療に役立つ機器を作る

医療に役立つ機器を作り、医療機関に販売提供するのが医療機器メーカーの仕事。
一言で医療機器といっても、大きく次の4つに分けられる。

・CTや内視鏡のような「診療機器」
カテーテルやレーザー治療、手術などに使用されるメスなどの「治療機器」
・ペースメーカーや人口骨などの「生体機能補助・代行機器」
・眼科用品や家庭用医療機器など「その他の機器」

その中でも、日本のメーカーは「診療機器」に強いと言われている。

みずほ銀行の「日本産業の中期見通し(医療機器)」によれば、2015 年の国内医療機器市場(生産+輸入―輸出)は2兆6,848億円で前年比3.6%減となったが、2016年は1.6%増の2兆7,277億円、2017年は2.9%増の2兆8,057億円、さらに2020年は3兆530億円と、中長期的には緩やかな拡大を見込んでいる。
医療現場での事故を減らす取り組みも
人の命を預かる医療現場では、ちょっとしたミスが医療事故につながりかねない。

そこで、医療機器業界では、医療関係者向けに正しい機器の使い方を伝える研修やプログラムを行い、事故防止につなげる取り組みにも力を入れている。

2008年4月からは医療機器の安全性を高めるため、病院側が医師や看護師に継続的な研修を行うことが義務付けられたため、これらの研修プログラムのニーズは今後ますます高まるといわれている。
アジア中心に輸出量拡大を目指す
医療費抑制政策が実施され、また経営が悪化する医療機関が増える中にあって、今後、医療機器業界が国内市場で金額ベースの拡大をとげるのは難しいと考えられる。

そうした中、注目されているのがアジアを中心とする新興国の市場だ。

もともと医療機器の市場はアメリカやEU、日本などの先進国に偏っていたが、今後は急成長を続ける中国やインドなどへの輸出が生き残りのための鍵となりそうだ。

豆知識

体内を駆け巡るカプセル型内視鏡とは?
小型カメラなどを内蔵したカプセル型の内視鏡で、口から飲み込んで腸のぜんどう運動にあわせてゆっくりと移動する。

その間に腸内で画像を撮影し、データを送信。データの受信は、患者の身体に装着したレコーダーで行うため、入院の必要もなく日常生活が可能。

カプセルは、最終的に肛門から排出される。検査中に病巣が見つかってもすぐにその場で治療できないという欠点もあるが、従来の内視鏡と異なり、痛みや心理的負担が少ないという大きな利点がある。

業界関連用語

●埋め込み型中心静脈ボートシステム
薬剤を体外から頻繁に注入するための経路として、あらかじめ皮下に埋め込んでおく医療機器。

薬剤を長時間投与するような場合の利便性や投与ルート確保の簡単さなどの理由から、近年、大幅に普及している。


AED(自動対外式除細動器)
突然、心臓の筋肉がまひ状態になり血液を全身に送れなくなった時、心臓に電気ショックを与えることで正常なリズムに戻すための医療機器。

一般財団法人日本救急医療財団のHPにてAED設置場所を検索できる(但し公開に同意されたもののみ)。
医学的判断ができない一般の人でも使えるように、操作をAEDの発する指示音声にしたがって行えるよう設計されている。


ダヴィンチ(da Vinci)
ダヴィンチは、米国で開発された、最新鋭の内視鏡手術支援ロボット。

ロボット本体(ペイシャントカート)、操作台(サージョンコンソール)などで構成され、ロボット本体には2~3本のアームとカメラが装着されている。

執刀医は、コックピットのような操作台でモニターに映し出される3D画像を見ながらコントローラーを操作し、本体のアームを操ることで手術を行う。
より精度の高い手術を可能にする最新鋭の医療機器として、国内でも導入事例が増えている。

どんな仕事があるの?

●営業
自社商品を、顧客である販売店や企業に提案・販売。顧客の要望を聞き出し、商品の改善や新商品企画に役立てる。

●開発
ハードウェア、ソフトウェアなどを使って、商品を設計開発する。

●サービスエンジニア
自社製品のメンテナンスや点検を行う。