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ビルメン・セキュリティ業界の就職

[業界研究] 専門・その他サービス


概要


建物の資産価値の向上を目指すため、適切な管理やメンテナンスを行っているのがビル管理・メンテナンス業界。セキュリティ業界では、法人・個人を問わず、防犯システムの導入や警備などを行っている。


ビル管理・メンテナンス業界


環境衛生からセキュリティまで快適環境を支える

都心の新しい大型オフィスビルはほぼ満室。
朝早くから夜遅くまで、多くのスタッフが集まる空間だけに、電気や通信、空調、給排水、エレベーターなどの各設備のほか、環境衛生や警備、防災など、快適なビル環境を保つためのいろいろな管理が必要となる。
それをとりまとめるのが、ビル管理・メンテナンス会社の仕事だ。
また、空き室があればテナント誘致をしたり、長期的に運営できるよう修繕計画などを立てたりするなど、常に快適で魅力的なビルであり続けるためのプランを練っている。

なお、ビルメンテナンス業は総務省の「日本標準産業分類」で、「ビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請負い、これらのサービスを提供する業」、一方、そのほかの建物サービス業は「主としてビルなどの建物を対象にして清掃、保守、機器の運転、そのほか維持管理についてサービスを提供する業」と定義されている。

2011年を底に市場は拡大傾向に。今後はより細かなニーズに対応
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の推計によれば、業界の総売上は2008年までは堅調に推移し3兆5,654億円まで成長した。
その後、3年連続で前年を下回り3兆5,000億円を下回ったが、翌2012年は3兆5,574億円と2008年の規模まで盛り返した。
その後も順調に売上を伸ばし、2015年は前年比3.3%増の3兆8,382億円と過去最高を記録した。
成熟市場という見方もあるが、2011年を底に市場規模は拡大傾向にある。

管理・メンテナンスの対象はオフィスビルに限らず、病院、マンション、官公庁、商業施設などさまざまで、まだ拡大の余地はありそうだ。
今後はよりきめ細かなニーズに基づいた対応が重要になってくる。
業態としては独立系だけでなく、不動産や金融、電鉄といった企業の系列会社も多い。
オフィスビルの高機能化に対処
オフィスビルに関しても、再開発地区や都心では、高いセキュリティや通信環境を備えた最先端ビルなど、年々高機能化している。
それに伴い、管理する側の専門知識や技術もいっそう多様化、高度化が求められており、人材の確保、育成も課題となっている。

今後は大手の寡占が進むとみられる一方、抱えている業種が多様であることから、特定の業務・分野についての専門性を高めた中小の企業が強みを発揮できる業界でもある。


豆知識


「建物のLCC」とは
LCCといっても、流行の格安航空会社のことではない。「建物のLCC」という場合は、Life cycle costのこと。
つまり、建物を建設してから、運用、廃棄にいたるまでにかかるすべてのコストのことをいう。

建物は竣工後も、修繕・更新費、運用費(水道光熱費など)、保守・管理費などが必要で、竣工してから解体廃棄に至るまでに要するコストは建設費の3~4倍といわれている。
そのため、建物の運営や修繕・更新などのプロパティマネジメント(業界関連用語参照)を適切に行うかどうかで、発生する費用や建物の寿命が大きく変わってくる。

また、LCCを構成するさまざまな費用の割合は、オフィスビル、ホテル、学校、商業施設など建物によって異なっており、それぞれにあった長期的なマネジメントが必要となっている。


業界関連用語


●ESCO(エスコ)事業
Energy Service Company の略称で、民間の企業活動として省エネルギーを行い、ビルオーナーにエネルギーサービスを包括的に提供する事業のこと。
ESCO事業者はビルオーナーに対し、工場やビルの省エネルギーに関する診断をはじめ、方策導入のための設計・施工、導入設備の保守・運転管理、事業資金の調達などの包括的なサービスを提供して省エネルギー改修工事を実現し、その結果得られる省エネルギー効果を保証する。

その報酬として、ESCO事業者は、ビルオーナーの省エネルギー効果(メリット)の一部を受け取る。


●プロパティマネジメント(Property Management)
土地や建物などの不動産に関する管理や最適化を行う業務のことをいう。
具体的には建物の物理的な管理・維持、テナントや賃借人の誘致・交渉、賃料の請求・回収、トラブル時の対応などがある。

十分なメンテナンスを怠ると、経年変化で設備の陳腐化や資産価値の下落をもたらすことになる。
そのため資産価値の向上には、最新のIT化への対応や、さらなる防災対策などを加えた、適切なプロパティマネジメントが求められている。


●HEMS、BEMS、FEMS、CEMS
いずれも建物のエネルギーを管理するEMS(Energy Management System)から派生した言葉で、建物内の配電設備、空調設備、照明設備、換気設備、OA機器などの電気使用量をモニターし制御する統合システムのことをいう。

HEMSは家庭(Home)、BEMSは商用ビル(Building)、FEMSは工場(Factory)に向けたシステムで、CEMSはこれらすべてを含めた地域全体(Community)に向けたシステムとなる。
HEMSやBEMSの導入には補助金が支給されることもあり注目をあびている。


どんな仕事があるの?


●設備・施工管理
電気、空調、エレベーターなど設備の定期点検を担当し、安全な運営を支える。

●運営管理
ビル運営をスムーズにするための管理を担当。入居者やテナントとの賃貸契約や契約更新、要望への対応などを担当する。

●営業
立地や建物の種別を踏まえてビルの管理計画を立て、オーナーに提案する。

●プロパティマネジメント
ビルを1つの財産と考え、テナントの募集から設備メンテナンスまで、資産価値を高めるためのプランを練って、運営を管理する。


セキュリティ業界


個人の防犯意識の高まりや東京オリンピックパラリンピックの開催もあって注目を浴びるセキュリティ関連市場

泥棒や空き巣と言った身近な犯罪の脅威だけでなく、世界各地で発生するテロによる爆発事件や凶悪犯罪に直面している現在。自宅への防犯カメラの設置など個人の防犯意識の高まりに加え、東京オリンピックパラリンピックの開催、高齢者向けサービスの多様化、ドローンを利用した飛行型警備用ロボットなど、さまざまな切り口でセキュリティ市場が注目されている。

富士経済ではセキュリティ関連市場を調査、その結果を報告書「2016 セキュリティ関連市場の将来展望」にまとめており、2016年のセキュリティ関連機器・システム/サービス市場は、前年比4.4%増の4,704億円、2019年には5,570億円まで伸長すると予測している。

街頭監視、空港、商業施設などで徐々に入退室・情報管理等々様々なニーズが現実のものとなっている。
同時に、東京オリンピックパラリンピック開催にともなう需要が見られ、開催が近づくにつれて首都圏を中心に宿泊施設や商業施設、オフィスビル交通機関などでもセキュリティ関連製品の需要が本格化すると予測している。
海外でテロが多発していることや訪日外国人客の急増、大規模災害の発生などに影響された需要も加わり、各分野での市場拡大が期待されている。
セキュリティ関連市場での今後の注目は監視カメラと警備用ロボット
セキュリティ関連市場で注目されている製品の1つが「監視カメラ」。
監視カメラの市場は従来のアナログカメラから、IPカメラ(国内ではネットワークカメラと呼ばれることが多い)に移行しており、今後はIPカメラが増加する一方でアナログカメラは大幅に減少していく。

なお、IPカメラとは、有線や無線のネットワーク機能を持つビデオカメラのことで、各社が開発に力を入れており、用途やシーンに応じて選べる機種が増えている。
スマートフォンタブレットで遠隔モニタリングできる家庭用の製品も充実してきている。
小さな子供や高齢者がいる家庭や、長期間不在にする自宅などの監視用としてニーズは高い。

また、高画質の4K対応機種も登場しており、今後は画像解析技術やAI(人工知能)を利用して、人混みでの人物特定や顔認証、動線の管理分析、追跡機能といったサービスの提供など、派生する新しい市場の本格化も期待される。

また、もう1つの注目製品は、「警備ロボット」。
監視するビルや工場、商業施設などで侵入者や不審者を発見すると、警報音などで威嚇したり、ユーザーや警備会社などへの通報を行うのが目的だ。
もともとは労働力不足への対応や、危険を伴う警備の回避などを目的に実用化が進められてきたが、技術が進展。
ドローンや飛行船を利用した飛行型製品の登場やサービスが提供され始め、注目度が高まっている。
飛行型製品は上空からの撮影や追跡、監視が可能なので、セキュリティ用途で高い効果が期待できる。警備ロボット分野も急速な市場拡大が期待されている。
2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けて商業施設や交通機関向け需要が本格化
ビル管理会社や住宅管理会社が契約する標準的なセキュリティサービスに加えて、企業や住人が個別にセキュリティサービスに加入するケースも増えている。

指紋が鍵になるシステムや、ネットワークカメラ(防犯・監視カメラ)や赤外線センサーで監視するシステム、24時間対応のコンシェルジュサービスなど、付加価値の高いセキュリティサービスにも注目が集まっている。

ビルや住宅だけではなく、学校や街全体など、セキュリティ業界への期待はさまざまな分野で高まっており、引き続きセキュリティ関連市場は拡大が期待できそうだ。

特に2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けては、競技施設はもちろん、宿泊施設や商業施設、交通機関などセキュリティシステムを必要とする施設や機関は多く、2016年からは需要が本格化すると見られている。


豆知識


顔認証システム
カメラで人の顔を読み取り、目や鼻の位置や形、顔の輪郭などの特徴をとらえて本人かどうかを識別するシステム。

指紋や瞳の中の虹彩、血管の配置模様などで本人を認識するシステムと異なり、指紋をセンサーにかざすといった手間が必要ないため、スピーディーに認識が行える。
本人認識率も上がっており、中には国家レベルのセキュリティ管理を行えるほど高性能なシステムも開発されている。

すでに、出入国管理やテーマパークでの入場ゲート、企業の出退勤管理などの導入事例があり、今後さらに広まっていくことが予想されている。

一方で、本人が意図しない形でプライバシーが知られてしまう危険性も指摘されており、本格的な普及には法整備の必要性などを訴える声もある。


業界関連用語


●生体識別装置/バイオメトリックス
指紋や声、顔、血流などで本人確認をする装置のこと。入退室管理など、セキュリティ分野でも取り入れられ始めている。

●ネットワークレコーダー
監視映像の記録・保存に加え、動きのある場面を察知し記録する動作検知や、必要な場面を迅速に探す検索などの機能を付加したIPネットワーク対応の画像記録装置。ネットワークカメラの普及とともに、市場が拡大している。

●画像遠隔モニタリングサービス
ネットワークカメラを利用したモニタリングサービス。留守宅見守りや駐車場、車庫、業務用の監視などの用途で、画像をPCや携帯電話からモニタリングできる。


どんな仕事があるの?


●営業  
企業や個人に向けて、安全を守るシステムや機器、サービスを提案する。

●警備スタッフ
ビルや住宅で契約に応じた警備サービスを行う。

●技術
安全を守る機器やシステムの点検やメンテナンスを行う。

●企画開発
新しいセキュリティサービスや機器の企画開発をする。