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薬品・化粧品

 

[業界研究] 薬品・化粧品

概要

薬品業界は、医療機関で使われる「医療用医薬品」、処方箋なしで利用できる「一般用医療品」などの開発・製造・販売を行う。

化粧品業界は、乳液や化粧水などの「基礎化粧品」、ファンデーションやルージュ、香水といった「メーキャップ化粧品」などを開発・製造・販売している。
薬品・化粧品業界
化学原料・生物原料から薬品や化粧品を生み出す

医薬品メーカーは、化学原料または生物から取り出した原料を組み合わせて薬品を作り、医療品卸業者を通して病院や薬局に販売。

2009年6月1日から薬事法改正により、風邪薬やビタミン剤などの限られた薬においては、一定基準をクリアした店舗で登録販売者が居ればコンビニエンスストアでも売ることが可能になった。

化粧品メーカーは、化学原料または生物から取り出した原料を組み合わせて化粧品をつくり、百貨店やドラッグストアなどに販売している。
国内だけではなく、商社などを通じて、海外への輸出も盛んだ。
規模の拡大を目指したM&Aの目的が多様化する製薬業界。世界レベルの再編も
国内では大手とされる製薬メーカーでも売上高は世界で10位以下(最大手の武田薬品が16位)、欧米の大手製薬メーカーとの比較では小規模と言わざるを得ないのが現状だ。

国内の大手3社の研究開発費を合計しても、メガファーマと呼ばれるファイザーノバルティスファーマ、ロシュ1社分の研究開発費と変わらない規模と言われている。

薬品の中で最も売上規模の大きいのが医療用医薬品。しかし、新薬の開発には長い時間と莫大な研究開発費が必要とされ、その成否が企業の業績を大きく左右することもあり、世界的にM&Aによる新薬開発力の強化が行われている。

1990~2000年代前半にかけては、大手メーカー同士のM&Aが積極的に行われ、規模を拡大することで増大する研究開発費に対応した。

2000年代後半以降は、バイオテクノロジーの進化による新薬開発手法の変化もあり、研究開発力の強化を求めてバイオベンチャーなどの買収が活発化。
バイオテクノロジーで生まれたバイオ医薬品は製造管理が難しく、ジェネリックによってとって変わられるリスクが少ないため、製薬会社にとってもメリットが大きいと言われる。

国内では少子高齢化もあり、社会保障給付費における医療費が年々増加傾向にある。

2016年9月に発表した厚生労働省の国民医療費の統計によれば、2014年度の国民医療費は40兆8,071億円、そのうち薬局調剤医療費は7兆2,846億円で全体の17.9%を占めている。国内市場においては薬剤費を抑制するための薬価引き下げや、ジェネリック薬(特許切れにより安価で発売される同成分の医薬品)の普及といった課題にも直面している。

一方で、医療制度が整い国民所得が比較的高い日本は、医薬品が必要な高齢者が増えているという側面もある。
国内メーカーが海外に活路を求めて進出すると同時に、海外から日本市場に参入してくる大手メーカーもある。

新薬の開発に限らず、販売力の強化、ジェネリックへの対応など、各メーカーの成長戦略に応じたさまざまな目的でのM&Aが模索されており、日本の製薬メーカーもその渦中にあることを指摘する声もある。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)の普及と2017年問題
新薬(先発医薬品)は、通常20年間は開発した製薬メーカーが独占的に製造・販売することができる。しかし、特許が切れると、同成分で安価なジェネリック医薬品が他社から販売されるため、製薬メーカーにとっては大幅な業績の悪化につながる。2010年前後に売上の大きい大型医薬品が次々に国内外で特許切れを迎えたため、「2010年問題」といわれ大きな話題となった。
2010年問題」をきっかけにジェネリック医薬品が大きく普及したこともあり、いまでは多くの人に認知されるようになっている。しかし、2016年~2017年にかけて特許が切れる新薬が一巡、これまで順調に規模を拡大してきたジェネリック医薬品だが、その成長にブレーキがかかるのではないかと指摘されている。これが、「ジェネリック医薬品の2017年問題」だ。
メーカー間で価格競争をともなう激しいシェア争いが繰り広げられることが予想されており、場合によっては再編や統合も含めて業界の模様が大きく変化する可能性もある。
化粧品業界は海外市場、ネット市場への販路参入もポイント
大手に限らず、中堅・中小にもブランド力と存在感を持つメーカーが多い化粧品業界だが、近年は、製薬会社やフィルム会社、飲料メーカーなどがスキンケアブランドを生み出したり、他業界の企業がナノテクノロジーを応用した美容液を発売したりと、さまざまな業界から参入するライバルも多く競争が激化している。

販売面においては、専門店や百貨店などを中心とした高級化粧品から、コンビニやスーパー、通信販売などに向けた中・低価格帯化粧品へ需要がシフトしており、国内市場は人口の減少もあって成長力を維持するのが難しくなっている。

そのため各社は、高齢者向けのアンチエイジング化粧品といった新分野の強化や、新たな販売先を求めて、アジア地域・ロシア・インドなどの新興国で市場開拓を進めている。

豆知識

将来への期待が大きいiPS細胞(induced pluripotent stem cells)
培養により、心臓や神経などさまざまな組織の細胞へと分化できる能力を持つ細胞で、2006年、山中伸弥博士らによって、世界で初めて作製に成功した。

自分の皮膚などの細胞に数種類の遺伝子を導入することで作り出し、培養すれば限りなく増殖させることができる。

病気などで機能を失った臓器に移植して、機能を回復させる再生医療の分野での応用が期待されているほか、iPS細胞による創薬も大いに期待されており、すでにiPS細胞を使った止血剤の生産に乗り出したバイオベンチャーもある。

なお、頭文字の「i」が小文字になっているのは、当時爆発的に普及し、今でも人気の高いiPodのように、世界的に普及してほしいという山中博士の願いが込められている。

業界関連用語

●抗体医薬
身体に備わった免疫力を生かすため、副作用が少ない薬品のこと。ガンやリウマチなどへの有効医薬として注目されている。

ゲノム創薬
遺伝子の塩基配列情報を利用することによって、新しい薬やより効果が高く副作用の少ない薬を開発する手法。この手法を取り入れることで医薬品開発の期間短縮が可能になると考えられている。

●登録販売者制度
薬事法の一部改正により2009年6月から新たに始まった制度。それまで医薬品の販売が可能なのは薬剤師のみだったが、登録販売者資格を取得すると、ドラッグストアなどで売られている一般用医薬品の第2類(解熱鎮痛薬、主な風邪薬など)と第3類(ビタミンB・C含有保健薬、主な消化薬など)の販売が可能になった。

ドラッグラグ(drug lag)
新薬を患者の治療に使用できるまでの時間差、または海外の新薬を国内承認できるまでの時間差のことをいう。日本は諸外国より新薬認可が遅く、新薬開発から承認まで平均4年と長いことが指摘されている。しかし、最近では、治験に対する医師の理解が進みつつあることや、治験コーディネーター(CRC)と呼ばれる職種の活躍などにより改善が期待されている。

どんな仕事があるの?

●MR
医療情報担当者。薬の販売先である病院や卸会社に薬の正しい情報を伝える。また、販売先からの薬への要望や意見を取りまとめる。

●新薬開発
新しい薬を生み出す。

●臨床開発
医師や医療機関などと協力しあい、臨床試験がスムーズに進むように調整する。

●生産技術開発
新薬を開発するための製造方法や包装形態などを研究開発する。

●治験コーディネーター
医療機関において、治験責任医師・分担医師の指示のもとに、医学的判断を伴わない業務や、治験に係わる事務的業務、業務を行うチーム内の調整等、治験業務全般をサポートします。