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40代が「経営への不信感」高める理由

経営方針への違和感が離職の原因?

40歳を超えた方の転職理由に「経営方針への違和感」が非常に多いことに驚かされます。

給料や仕事内容、評価への不満など、自分自身に直接かかわる不利益ではなく、「会社が目指している方向性に納得できない」「社長の考え方についていけなくなった」という経営に対する価値観の相違が、会社を辞めさせるほどの動機になってしまうのはなぜか。また、そうしたケースで転職に成功するにはどうすればよいのか、その秘訣とともにお伝えします。

■仕事への満足度は世代間に大きな差なし

 仕事そのものへの満足度、職場の人間関係への満足度、仕事を通じた「成長実感の有無」など、仕事や職場のどこに満足を感じるかという基準値は多様にあります。

 リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査2018」によると、

●仕事そのものへの満足 満足派38.3% 不満派24.7%
●職場の人間関係への満足 満足派39.4% 不満派26.4%
と、2つの大きな指標ではいずれも満足している人のほうが多数という結果になっています。

 また、このデータは20代と40代を比較しても大きな差はなく、現在の仕事そのものや人間関係の満足度については、年齢の違いに大きな影響がないことが見て取れます。

 実は、「年齢が上がると仕事の熟練度が上がるから仕事への満足度が高まるのではないか」「社歴が増えるほど気を遣う相手が減るから人間関係の満足度が高まるのではないか」と予測していたのですが、年齢が若く経験が少ないほど仕事に新鮮味を感じたり、人間関係が短いほど緊張感が保てていたりという、プラス要素もあるのかもしれません。

 仕事や人間関係にはそれなりに満足しながら、では、なぜ、40歳を過ぎると、経営方針への違和感という不満因子が頭をもたげてくるのでしょうか。2つのケースからその原因を考えてみましょう。

 

●タイプ1 ノスタルジー

「昔はよかった。今は目先の利益のために顧客価値を見失っている」

 47歳のAさんは、厨房機器などを取り扱う中堅機械メーカーの営業部長。25年もの間、まじめに仕事に取組み、同期の中でも一番早く課長に昇格しましたが、10年前に若手部長として抜てきされてからはあまり役割に変化がなく、今ではすっかり最古参部長職となられているとのことでした。一度も転職経験がなく、愛社精神のかたまりのようなAさんが転職を検討するに至った理由を伺ってみると、「現在の経営方針が納得いかない。特にお客様第一主義だった創業者の精神が引き継がれておらず、利益主義が暴走することに耐えられない」というものでした。

 「私が入社したころは、こんなに人間味のない会社ではなかった。顧客のために汗水流し、いい商品を作ってお客様から支持をいただき、その結果、シェアを伸ばすことができたんです。この精神をないがしろにしたら、うちがうちでなくなってしまいます」

 義憤とでも表現したくなるような悲壮感で、会社の方針転換を嘆くAさん。聞けば、創業者から20年近く前に二代目に代替わりした後、5年ほど前に投資会社に事業売却されてから、より一層経営のかじ取りがおかしくなったとのことでした。

 Aさんのように、「昔の会社とは経営の考え方が変わってしまった」という懐古型のパターンは一つの典型例です。

●タイプ2 評論家型

「そもそも経営戦略が間違い。若い社長の取り巻きもイエスマンばかり」

 大手出版社に勤務するBさん(52歳)は、昨年からグループ会社の事務処理業務を集中的にとりまとめる関連会社に出向中。役職名は次長というポジションですが、実際には直接の部下はおらず、いわゆるプレーイングマネジャーとして、発注元であるグループ会社との窓口業務に従事しています。出版業界の構造的な不況という、世の中の流れそのままに、Bさんの会社も右肩下がりの業績が続いており、Bさんの出向が解けて本社に戻れるかどうかも読めない状況にあるということで、いざというときに備えるために転職相談に来られました。

 Bさんの転職理由は、将来への不透明感の高まりが主なものでしたが、よくよく聞くと、やはり現経営陣への不満が非常に高く、実際にはそのストレスが転職活動に走らせている原因のようでした。

 「現社長の○○君は、新人時代に部下だったのでよく知っているんですが、頭は切れるが線が細いところがあって、やはり戦略に軸が通っていないんですよ。少なくとも彼が副社長になった10年前に手を打ち始めておけば、こんな体たらくにならなかったはずだと僕は見ています。すべての歯車が狂った原因は、○○が担当していた提携戦略のミスにあります。とにかく戦略の筋が悪すぎるんですよ。さらに輪をかけて、バカ高いコストをかけて、いいかげんな経営コンサルティング会社に発注しているんだからやってられませんよ」

 もはや雇用契約上の守秘義務が吹き飛ぶくらいに自社批判をまくしたてるBさんの口ぶりは、敏腕の経営評論家レベルに達しています。この戦略批評型は、ベテランの方に多いもう一つの代表的パターンです。また、蛇足ではありますが、いくら社歴が自分より短くても、自社の経営者のことを「○○君」と呼んでいる時点で、かなり危険な兆候といえます。

 

■価値観のズレは加速しがち、早期の退職判断も重要

 経営方針に違和感が生じて退職を考え始める方々の共通点として、特に多いのが以下の4項目です。

(1)そもそも愛社精神が強い
(2)業務遂行能力が高く、若い時代から活躍してきた
(3)主体者意識が強く、自分なりの意志や持論を持っている
(4)その結果、プライドが高く、柔軟性が低い
 若手時代から、がむしゃらに働き、会社に貢献して評価も得てきた企業戦士が、競争の原理で、経営のかじ取りを任されるに至らず、その愛社精神と有能さが逆回転した結果が、「経営方針に違和感」を持たせる結果につながってしまうようです。だからこそ、彼らの発する警鐘には一理があり、一理があるからこそ経営側との摩擦熱も高くなってしまうのではないでしょうか。

 しかし、どれだけ熱い思いを持ち、そこに筋や合理性があったとしても、一社員の反対意見で経営方針は簡単には変わりません。一方で、現状の経営陣や体制に疑問を抱いてしまった側も、そもそも頑固な愛社精神を持っているので簡単に引き下がることもありません。結果的に、その価値観の違いは収まることなく、時間の経過とともに激しくこじれていくケースが多くなります。

 会社が簡単に方針を変えることがなく、自分としてもそれを受け入れられる余地がないということが明白な場合は、早い段階で会社を出て、自分が生き生きと働ける場所を探し始める選択をしたほうがいいかもしれません。いつまでも不健全な不満を募らせて働くよりも、思い切って働く場所を変えて、気分よく働ける会社を探すことは、合理的な転職といえると思います。

■企業選びで再び失敗しないために

 それだけ強い思いを持ちつつも残念ながら価値観のギャップが生じてしまった方は、転職経験が少ないことが多いため、企業選びは慎重に進める必要があります。売り上げや経常利益など公表されている財務データ、業種や仕事内容、年収、労働時間や休日などの働き方の条件面は当然のことながら、特に価値観や企業風土のような数字では見えない側面に注意していただきたいと思います。以下に3つのポイントを示します。

(1)その会社の企業理念に自分が共感できるか

 ほとんどの企業は、その企業の存在目的や使命を言語化した企業理念やビジョン、ミッションなどが設定されています。その理念が、顧客を向いているのか、市場を向いているのか、従業員に向けられたものか、社会や地域などを重視したものか、などの観点を参考に、自分自身が賛同・共感できるものかどうかをチェックしておく必要があります。

(2)その会社が理念をもとに運営されているかどうか

 また、理念がいくらきれいにまとめられていても、行動と矛盾があるケースがあります。顧客第一主義を標榜しながら現実の意思決定は株主の短期利益重視になっているケースなど、会社のホームページで公表されているニュースリリースなどをチェックして、確かめていただければと思います。

(3)評価制度や福利厚生から従業員重視度を確認する

 企業の風土を知るには、評価制度をチェックするのが有効な方法です。どのような成果やプロセスが求められるのか? どんな人が評価され、どんな期間や評価制度を採用しているのか? という、業績評価や昇進・昇給の仕組みに、その企業の従業員の見方が凝縮されているからです。また、福利厚生や年間休日数、その会社独自の制度などからも従業員重視度を推測することも可能です。

 会社も、人間も、長い時間の中では少しずつ変化していくのは当然です。価値観が合わなくなるのは決して悪いことではありません。長い仕事人生を少しでも生き生きと自分らしく過ごしていくために、必要があれば、ぜひ自分にとって意味のあるチャレンジにつなげていただければ幸いです。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行

 ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に本連載を書籍化した「転職に向いている人 転職してはいけない人」(【関連情報】参照)など。「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/
 

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